AIに負けないタイピングベース

Open AI社が開発した自然言語処理ツール『Chat GPT(チャットGPT)』の出現により、人工知能が再び注目を浴びています。
われわれタイピングベースの主要事業である『文字起こし』も、AIに任せると1時間の音声データを5分前後で、あっという間に形にしてしまう画期的なサービスもあります。
目まぐるしい発展により「テープリライターの仕事は、いずれなくなる」なんて言葉も度々耳にするようになりました。
けれど、私たちはこの逆風に立ち向かっていく決意を固めました。
血の通った人間だからこそできることは、きっとこの世の中にたくさん眠っているはずです。
例えば、私たちが文字起こしの作業をする上で常に心がけていることのひとつである情景が目に浮かぶような読みやすさ。
機械的にただ文字を羅列しただけでは内容も感情も全く伝わりませんが、時としてそこに冗談交じりで発したことを意味する『(笑)』や、悩みの末に絞り出した言葉であることを表す『……』などを付け足すことによって文章に命が吹き込まれます。
さらに、間違えてはならない漢字を指示書通りに正確に変換することや、聞き取れなかった箇所を飛ばしてしまうのではなくタイムコードを用いて表記するといったようなサービスは、人と人との間にこそ生まれるものだと考えております。
このように凄まじい進歩を遂げるAIを前に、あえて最新技術に頼らず、全国各地の仲間たちと試行錯誤を重ねながら、私たちにできることを日々追求し続けるのもまた『タカラ探し』の一環です。
多少時間がかかってしまっても、これまでと同様に一つ一つ丁寧に手作業することで、お客さまの負担となり得る確認・修正作業を省き、少しでも他の作業に充てる時間を増やしていただけるように。そして、少しでも心安らぐ時間をつくっていただきたいという気持ちで作業に取り組んでいます。

つらつらと思いの丈を綴ってしまいましたが、ここで一つ実例をご覧ください。
下記は、夏目漱石の『こころ』という作品の一部、音読データをAIによって文字に起こしたものです。
 

「私はその人の記憶を呼び起こす事にすぐ先生と言いたくなる。
腕をとっても心持ちは同じことである。よそよそしい頭文字などはとても使う気にならない。」

 
そして、こちらが私たちテープリライターによって文字に起こしたものです。
 

「私は、その人の記憶を呼び起こすごとに、すぐ「先生」と言いたくなる。
筆を執っても心持ちは同じ事である。
よそよそしい頭文字(かしらもじ)などは、とても使う気にならない。」
 
夏目漱石(1914)『こころ』より

 
このように比較してみると、読点の打ち方や括弧の使い方の違い。さらに「筆を執っても」という部分が「腕をとっても」と、誤った起こしをされたことで、内容自体が変わってしまっているのが窺えると思います。
『文字起こし』というのは、見かけによらずとても繊細な作業です。
研究や取材、コンサルティングなど個人情報が、ふんだんに盛り込まれた音声データを取り扱う以上、情報流出にも細心の注意を払わなければなりません。
無防備なサイト上にデータを添付することで生じるリスクの大きさを考えると、やはり無機質なものに頼るより、信頼関係のもとで繋がっていられる安心感に勝るものはありません。

きっと私たち以外にもAIの猛威に頭を抱えているさまざまな業界の方がいらっしゃることでしょう。
そんな時に、ふと思い出してもらえるような存在になりたいと私たちは考えております。
文字起こしに限らず、私たちにできることがあれば何でもお声掛けください!
枠を越え助け合いながら、このAI時代に負けることなくともに前へ進んでいきましょう。

< 一覧へ戻る