テープ起こしを行う上での音声の重要性

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音声データはテープ起こしをやっていく上では欠かせないもので、テキストの信憑性、そしてテープ起こしの作業そのものに深く関わってきます。インタビューや会議など、録音された音声を元にライターは文章を起こしてくので、作業を正確で確実なものにするために音声の質はとても重要になってきます。

音声起こしの流れ

テープ起こしはお客様からいただいた音声を再生しながらやっていきます。
初心者の状態で1時間の会議やインタビューなどをテキスト化しようとすると、長くなると約一週間という膨大な作業時間を費やすことになってしまいます。プロのライターはこれを最速1日で終えてしまいますが、それでもやはり相当な労力と時間を消費することになります。文字起こし作業というのは想像以上に手間のかかるものなのです。
 
テープ起こしの一般的な流れとしては、発注を受けお客様から音声の録音されたファイルやメディア媒体をお預かりするところから始まります。依頼されるお客様によってICレコーダー、CD、USBメモリなどデータ媒体はさまざまです。同等に内容もインタビューから座談会、会議やシンポジウムなど幅広いジャンルの依頼がきます。
 
データを受け取ったら、次に音声の品質を確認します。これはのちに説明しますが、この過程で確認される音声の品質は今後の作業スピードや完成品の質を大きく左右するほど重要になってくる要素です。この段階で音声の状態によっては依頼をお断りする場合もあります。データチェックののち、音声に問題がなければ見積もり等所定の手続きを経て、いよいよ作業開始となるのです。
 
ライターは音源を聞き、それをテキストに起こしていきます。テープ起こしにおける音声とは商品作成における根本、いわゆる原点です。不明点を明記しつつ、音源の情報から外れることのないよう書き進めていきます。何度も音声を再生し、聞き取りづらいところも明らかにしていきます。資料を確認したり、ネットで検索したりと、ただ書き出していくだけでは進みません。そして構成を確認しおかしいところがないかといったところも同時に見ていきます。そういった作業の末、一つのテキストが完成するのです。
 
こうしてできたものがお客様のもとへと納品されていきます。テープ起こしにはある一定の情報の正確さが求められる作業なのです。内容からずれたことが書かれてあると大変なので、ライターの責任は重大です。さらにそこに素起こし(会話の中に含まれる「えー」や「あのー」といった無意味な相槌もすべて書き起こす文字起こしの仕上げ方)や整文(会話文を「です・ます」調の書き言葉にする仕上げ方)といった作業が絡んでくると、ライターにはかなりの集中力が必要とされてきます。ここでなぜテープ起こしにおいて音声が重要なのか、これについて話していきます。

音声データの質について

先ほども触れましたが、テープ起こし作業でとても重要なのが音源から再生される音声の質です。例えば、古い車のカーラジオから流れてくる音楽より家電量販店にディスプレイされているスピーカーから再生される音楽の方が聞き心地がいい、というようなことは至極当然なことです。
テープ起こしの場合でも同じようなことが言えるわけで、音声の状態がよければそれだけ聞き間違いによる誤入力などのミスが減り、テープ起こしの作業レベルもグンと上がってきます。ライターが頼りにするのは基本的にお客様から提供された音声データのみです。音源はいわば商品を生み出すための要なのです。
 
音源によっては話し手の癖などもテープ起こし作業の進行に大きく関わってきます。滑舌が悪かったり語尾が消えていたりする場合は作業難度が上がります。また話し手同士の会話が被っていたり相手の話を相槌などで掻き消してしまっていたり、なんていうケースもあります。素起こしをするときなどは特にこの要素が重要になるのです。誰かが「〜ではないか」と発言したものを「〜ではない」と書き起こしてしまってはまったく違う意味になってしまいます。こういったミスは、聞き取れなかった音声の箇所は一時的に〇〇などと表記し、後からまとめて聞きなおしたり、会話の流れや文脈から判断したりすることで解消することができますが、結果的に二度手間になってしまいます。最悪の場合、ノイズで音声が聞き取れず何十回も同じところをリピートしなければならないということも起こってしまいます。
 
テープ起こしの作業効率や正確なテキストを作成する上では、音声の明瞭さや質はとても重要な要素であると言えるでしょう。

録音・記録する際の心がけ

では、果たしてどうすれば品質の良い音声データを作ることができるのでしょうか。
音声を録音する際は、
 
① 音の大きさ
② 周囲の環境音
③ 録音機器の設置場所
 
この三つを心がけるようにしてみるといいとされています。
まず①音の大きさについて。テープ起こし用の録音をする際、音声が割れないよう、かつできるだけ大きい音で録音するようにしてみてください。録音時の音声が小さいと、音を大きくする際に音質低下を招いてしまい同時にノイズも大きくなってしまうので、録音レベルはなるべく高めに設定するようにしましょう。逆にレベルが高すぎると今度は音割れやひずみが起きてしまうのでレベルの上げすぎには注意しましょう。レベルメーターが機材についている場合は、レベルを超えないよう環境設定をしてみてください。書き起こしをしていく上で最も大きな障害となるのが音量とノイズです。音が極端に小さすぎたりノイズが常に入っていたりすると、ダイレクトに作業の遅延につながってきます。特に音源全編にわたるノイズの中での書き起こし作業は、作業困難とされ依頼を断られてしまう場合があるので注意してください。
 
②の周囲の環境音についてですが、なるべく生活音や環境音が入らないようにしましょう。扇風機やエアコンなどの家電も極力消してください。照明やPCのディスプレイ、プロジェクターなどもノイズが発生する原因になるので、余計なものは決しておくことが望ましいです。外の音も極力入らないよう、窓やカーテンを閉めるなどして対策をしましょう。服や靴などもできるだけ音の出ない柔らかいものを身につけることをお勧めします。また、エコーのかかる大きなホールや音の反射が多い場所は録音場所としてはなるべく避けたほうがいいとされています。
 
最後に③の録音機器の設置場所についてです。録音する際は録音機器から話者までの位置を考えて機材を設置しましょう。近すぎるとブレスが入ってしまっていたり、離れすぎると今度は音がぼやけて録音されてしまったりして、聞き取りづらい音声になってしまいます。また、話者と機材の位置はなるべく一定のものにするよう心がけてください。機材は一定の場所に固定しておくことが望ましいです。ICレコーダーなどの携帯録音機器はポケットに入れていると服の擦れる音などがノイズで入ってしまうため、平地にタオルや毛布などをおいてその上で、スタンドがある場合はスタンドを使い録音するといいようです。また発言者が一人の場合は単一指向性マイクロホンを、複数人の時は無指向性マイクロホンをお使いになることをお勧めします。
これら三つのことを心がけるだけで、音声データがより明瞭なものになっていきます。少し環境を変えるだけで情報としての信頼度が一気に上がるのです。

聞き取りやすい声とは

話者の皆さんにも、少しだけ心がけてほしいことがあります。音声を録音するときはもちろん、人と話すときに聞き取りやすい声の方が相手から好印象を得られるチャンスが広がります。会議の時などもよく通る声の方が、説得力があります。聞き取りやすい声というのはコミュニケーションを円滑に行う上でも必要とされるある種スキルのようなものですね。
相手に何かを伝えようとするということは、それだけエネルギーを消費します。しかしいくら伝えようとこちらが頑張ったところで、効果的に喋ることができなければエネルギーの浪費になってしまいますよね。話す時というのは、対象をしっかりと決め、どういった話し方で伝えるのか。これを考えながら話していくと自ずと説得力もついてくるでしょう。
話者さんたちにはそういったところを心がけていただきたいです。
具体的には、
 
・話の「間(ま)」を意識して話す。
・ゆっくりはっきりと発語する
・場所に合わせてボリュームを調節する
 
といったことを念頭に置いて話を進めていくことを勧めします。
話の「間(ま)」、一口にこう言われても難しいものがあります。例を挙げるなら政治家の方の会話での間の取り方はとても上手いですね。まあ彼らはがうまいのは間の取り方だけではないのですが(笑)。彼らは信用が第一ですから、落ち着いた印象でゆっくりはっきりと話さなければなりません。この点もやってみていただきたいポイントですね。場所に合わせて発発声するということもまた重要で、例えば音の響きやすい場所や静かな場所では多少音量を下げて喋ったり、逆に音が響かなかったり騒がしい場所では声を張り上げて話さなければなりません。
これもまた、少し心がけるだけで大きく音声情報の質を変えることができます。

録音内容を明示することで効率化を

どのようなテープ起こし案件でも言えることなのですが、文字化する際に聞き取れない音声箇所や不明な単語が出てくる場合があります。録音環境の問題もそうですが、話し手の癖などで音が不明瞭になってしまうことは、いくら徹底的に環境をセッティングしても起こりうることなので仕方ない面もあります。もちろん可能な限り弊社のライターも対応致します。しかし、ライターの耳だけに頼るのにも限界があります。何度聞いても聞き取れないところは最終的に発言者本人か、その音声が録音された場所に同席していた人にしかわかりません。ですが、少しでもこういった不明語句を減らすことは可能です。
 
どんな音声データにも、その議題や話されているテーマがあるのです。同時に話されている内容もさまざまです。ライターの内容理解度と最終的なテキストの完成度は比例します。聞き取れない語句があったとしても、ある程度内容を理解していれば、会話の流れや文脈から単語を割り出すことができます。そのためお客様から資料やインタビューの概要説明等いただけると非常にありがたいです。
ご提供させていてだく商品の精度向上にもつながりますし、納品に至るまでの流れが非常にスムーズになります。これからテープ起こしのご利用を検討されている方はぜひともご協力をお願い致します。

まとめ

テープ起こしという作業は、想像以上に技術を必要とされます。タイピングスキルなど初歩的なものから始まり、日本語力や作文力、読解力なども必要になってくるのが文字起こしという作業です。やってみると分かると思いますがとにかく予想以上に時間がかかるのです。
 
テープ起こしにとって音声はすべての源となります。納期短縮や正確な書き起こしのためにもご協力いただけると幸いです。

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